第12章 あなたは誰

桜井昭子は本当のことを言わなかった。江口美月に心配をかけたくなかったし、それに大したことが起きたわけでもない。

「そう、じゃあもっと食べなさい。見てよ、こんなに痩せちゃって」江口美月は卵焼きを一つ挟むと、彼女の茶碗に入れた。

「うん」

食事はとても楽しく、三人とも笑い声が絶えなかった。桜井昭子は長谷川悠人が江口美月を大切に思っていることにも気づいた。自分が去った後、美月ちゃんを愛してくれる人がいるというのは、やはりとても良いことだ。

最後に長谷川悠人が洗い物を買って出て、それを終えてから帰っていった。

桜井昭子と江口美月はソファに身を寄せ合い、親密な話をしていた。

「美月ちゃ...

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