第129章 心を開く

篠崎は口の端を吊り上げた。その笑みはあまりにも絶望的で、凄惨なほど寂しげだった。昭子は胸を締め付けられ、思わず彼の方へ歩み寄ろうとする。

「昭子。決めたのなら、もう振り返るな」

篠崎は腹を括ったように、再び顔を上げた。その目尻は赤く染まっている。

「遠山圭吾はあの別荘にいる。行け!……幸せになれよ!」

昭子の瞳が揺れる。彼女は最後に一度だけ彼を深く見つめると、踵を返して歩き出した。

遠ざかっていく彼女の背中。愛する男のもとへ向かうその姿を見送る篠崎の胸中で、苦痛が際限なく膨れ上がっていく。

傍らで見ていた須田樹は、居ても立ってもいられなくなった。

「篠崎社長、貴方だって桜井さんの...

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