第16章 私たちは友達

「気にしないで、もう気にしてないから」江口美月は穏やかな笑みを浮かべた。

最初は確かに少し心惹かれたが、ずっと自分の感情を抑えようと努めてきた。幸いにも、もう少しで深みに嵌まるところで、長谷川悠人の反応が彼女をすんでのところで引き戻してくれたのだ。

そう考えると、彼女は長谷川悠人に感謝したいくらいだった。

目の前から長谷川悠人が一人去ったかと思えば、今度は招かれざる客が一人やってきた。

相田由美は会社でずっと、意図的にか無意識にか、江口美月を目の敵にしており、江口美月には彼女の悪意がどこから来るのか全く分からなかった。

彼女は腕を組み、休憩室のドアに寄りかかると、尊大な態度で指示した...

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