第179章 彼を気遣う

桜井昭子の献身的な気遣いのおかげで、篠崎司はどうにか食事を口に運ぶことができた。本来なら胃の不調に苛まれ、何も受け入れたくないはずだったのに。

だが今回は、桜井昭子が傍らにいてくれる。それだけで皿の上の料理が格別に美味しく感じられ、自然と口元が綻んでしまうのだった。

食後、桜井昭子の視線は床から天井まで続く窓の外、パリの夜景に釘付けになっていた。精巧で優美な建築物の数々を、彼女は一つ一つ確かめるように、感嘆の眼差しで見つめている。

篠崎司は彼女の手を握り、声を柔らげた。

「昭子、少し外を歩こうか」

「ええ」

桜井昭子は頷き、素直に応じた。

微風が桜井昭子の髪を優しく揺らす。篠崎司...

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