第201章 そいつを好きになったのか

蒼介は電話越しの言葉に、思わず息を呑んだ。パリの研究所でのプロジェクトは、順調にいっても一年はかかる大仕事だ。あの仕事人間である司が、それを放り出して帰国するなど正気の沙汰ではない。よほどの事態が起きたに違いない。

司をこれほど焦らせるとは、まさか修斉がとんでもない不始末でもしでかしたのだろうか。

だが、蒼介が問い質す隙も与えず、司は一方的に通話を切った。

今の彼の頭の中には、ただひとつのことしかない。一刻も早く帰国し、昭子のもとへ駆けつけ、全ての誤解を解くことだけだ。

秘書のユキは彼の焦燥を即座に察知し、帰国の手配を迅速に進め、プライベートジェットを押さえた。

司はスマートフォンを...

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