第25章 当たり屋

江口美月がホテルに駆けつけた時、遠くに長谷川悠人が入り口に立っているのが見えた。

以前は多少なりとも好感を持てていたが、今はもう欠片も残っていない。彼女は長谷川悠人の存在を完全に無視し、まっすぐ中へと向かった。

「美月ちゃん、待って」長谷川悠人は彼女の腕を掴んで説明しようとしたが、江口美月は全く聞く耳を持たず、その手を振り払った。

「確か、主任はあなたを呼んでいないはずですけど」彼女は苛立った表情を見せる。前回の件は全て長谷川悠人のせいではないにせよ、彼の弱腰な態度は、江口美月の心の中ではっきりと不合格の烙印を押されていた。

「美月ちゃん、この前のことは……」

「やめて。あなたの話に...

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