第27章 世界は本当に狭い

桜井昭子はなおも進もうとしたが、桐山霖は足早に駆け寄り、彼女を引き止めた。

「桐山様、もう結構だと申し上げました」桜井昭子の眼差しは穏やかだった。過去のことは既に起きてしまったことで、誰かを恨むつもりもない。ただ、もう過去とあまり関わりを持ちたくなかった。

「やはり俺が送ります。あなたは今スマホがないし、タクシーも呼べないでしょう。それに、今は夜だ。もし俺たちが去って、さっきの男があなたに仕返しをしに戻ってきたらどうするんです? あなた一人では、彼の相手にはならない」

認めたくはなかったが、桐山霖の言うことは確かに事実だった。

もし桐山霖たちが去ってしまえば、先ほどの男の性格からして、...

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