第36章

真心を踏みにじられるというのは、ひどく心を傷つけるものだ。彼女は二度とそんな経験をしたくなかった。

ましてや篠崎司とは何者か?彼は遠山圭吾よりもずっと手強い。自分は遠山圭吾すら手懐けられなかったのに、どうして篠崎司ならできるというのだろう?

今となっては、二の舞を踏むつもりはないし、ましてや同じ過ちを繰り返すつもりも毛頭ない。

それでも彼女は考えずにはいられなかった。もし篠去司が自分がもうすぐ死ぬと知ったら、一体どんな顔をするだろう?

きっと無関心だろう。篠崎司のような人間が、自分の生死を気にかけるはずがない。

彼女はため息をつき、部屋のドアを開けた。中に入るとすぐ、江口美月がソファ...

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