第38章 彼とは何の関係もない

「桜井昭子、会って話がしたい」

「どちら様ですか?」桜井昭子は眉をひそめた。九条蓮の声ではないし、この電話番号にも全く見覚えがない。いきなり会いたいと言われても、勘ぐらずにはいられない。

「篠崎修斉だ」男の声は低く、何の温度も感じられなかった。

その名前を聞いて、桜井昭子は思わず固まってしまった。声を押し殺した篠崎修斉の声は、篠崎司によく似ていて、彼女の心臓がどきりと跳ねた。

でも、篠崎修斉が自分に何の用だろう?まさか、篠崎司のこと?

もう疲れた。篠崎司から逃げようとするたびに、周りの出来事がなぜか彼と関係してきて、自分も否応なく何度も巻き込まれてしまう。

「江口美月についてだ」篠崎修斉は彼女...

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