第390章 彼女の正体

桜井昭子の正面からの写真を撮るためだけに、これほど長くつけ回し、食事さえ摂っていない。もう空腹は限界だ。

桜井家の御曹司たる自分が、いつこのような惨めな思いをしたことがあるだろうか。

今日の災難を思うと、桜井辰希は自分が哀れでならなかった。彼は桜井昭子に視線を向ける。

「お姉さん、俺、今日は本当に散々なんだよ。この悲惨さに免じて、自分から正面写真を撮らせてくれないかな?」

桜井辰希はやはりまだ若い。その情けない姿に、桜井昭子は妙にほだされてしまった。

彼女は思わず溜息をつき、桜井辰希の目の前まで歩み寄る。

「確かに散々ですね。でも、正面からの写真は撮らせません」

「なんでだよ?」...

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