第50章 それとも

桜井昭子の瞳の奥には、拒絶と不満の色が満ちていた。口調は硬い。

「結構です。白川さんも、言ったことは守ってください。この件が終わったら、私だろうと私の友人だろうと、トキワエステートとは一切関わりがない、ということで」

その言葉を聞いて、白川あかりの表情がさっと冷たくなった。桜井昭子の分際で、自分にそんな口を利くことが許されるとは到底思えなかったのだ。

「桜井さん。いいえ、桜井さん。桐山社長に気に入られるのは良いことですが、ご自分の身の程もわきまえるべきですわ」

そう言い放つと、彼女は桜井昭子を冷ややかに一瞥し、そのまま踵を返して去って行った。その背中は自信に満ち、華やかで、自己主張が強かっ...

ログインして続きを読む