第51章 対して

篠崎修斉は歯を食いしばり、彼女にそれ以上何も言わず、そのまま踵を返して去っていった。

桜井昭子もコーヒーを手にプレゼン会場へ戻り、桐山霖の隣にそっと腰を下ろした。「桐山社長、コーヒーです」

桐山霖は手を伸ばして受け取ると、口元に微かな笑みを浮かべた。「ありがとう」

桜井昭子がいざ座ろうとしたその時、篠崎司が不意にこちらを振り向き、冷たい視線を彼女に投げかけた。桜井昭子はその場で凍りつき、自分の声が大きすぎて篠崎司の邪魔をしてしまったのかと思った。

彼女はおずおずと「申し訳ありません」と口にした。

篠崎司は何も言わず、視線を元に戻した。

桜井昭子は激しく鼓動する心臓を撫でつけ、先ほど...

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