第53章 彼らの以前のこと

婚約を破棄したのは桐山霖であって、彼女ではない。全ての責任を彼女に押し付けるなんて、一体どういうことなのか。

桜井昭子は考えれば考えるほど腹が立ってきて、直接彼を突き飛ばし、ソファから降りて休憩室から出ようとした。

しかし、二歩も歩かないうちに、篠崎司は桜井昭子を力強く腕の中へ引き寄せた。その力は決して優しくはなく、桜井昭子の腕に鋭い痛みが走り、思わず涙がこぼれ落ちた。

「篠崎社長、一体何がしたいんですか?」

篠崎司は彼女を腕の中に無理やり閉じ込め、冷たい声で問い詰めた。「お前とあいつは一体どういう関係だ? なぜあいつのためにおれを騙した?」

一言一言が、まるで歯を食いしばって発せら...

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