第56章 やるだけやって責任を取らない

人の良さそうな年配の女性が、お盆を手に部屋のドアの前に立ち、礼儀正しく二度ノックした。

桐山霖と桜井昭子の視線は、すぐにそちらへと引きつけられた。

家政婦は二人に頷くと、にこやかに桜井昭子の傍らへ歩み寄った。「坊ちゃまがご用意するようにと仰った朝食でございます。今までお休みでしたから、さぞお腹が空いているでしょう。少しお腹に入れてください。何か食べたいものがあれば、後で教えてくだされば、夜にお作りしますよ」

桜井昭子は頷き、口元に笑みを浮かべた。「ありがとうございます」

そう言って、家政婦は身を翻して部屋を出て行ったが、去り際に意味深な視線を二人へと向けた。

その眼差しか...

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