第65章 生理的な必要

ましてや篠崎司はもうすぐ白川あかりと婚約する。ようやく想い人を手に入れたというのに、どうして今さら自分のような過去の恋人を気にかけるというのだろうか?

そこまで考えて、桜井昭子は夢から覚めたように我に返った。自分はどうかしていた。どんどん深みに嵌まっていく。

あの時、篠崎司に車へと抱え上げられた際、白川あかりの怒りの叫び声が聞こえた。篠崎司の婚約者なのだから、腹を立てるのも当然だ。

桜井昭子は、二人の恋愛における不倫相手になるつもりなど毛頭ない。ましてや、既に婚約者がいる篠崎司とこれ以上関わりたくはなかった。

「あの、私、あとどれくらいでここを出られますか?」

古川蘭が薬を塗り終える...

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