第53章

宝生ミクルが去ったあと、羽村寧音は何事もなかったかのように宝生知優と会話を続けた。

「知優、あのね――」

二人がちょうど話に花を咲かせていた、そのとき。

宝生知優のスマホが不意に鳴った。

田村青美からの着信だ。

「ごめん、ちょっと失礼」

申し訳なさそうに笑い、彼女はプールサイドの人の少ない場所へ移動して電話に出る。

「うん、わかった。今はちょっと動けないから、先にそっちで処理して」

要件だけ手短に片づけ、通話を切る。

そして振り返った瞬間――ぶつかったのは、毒を塗ったような視線だった。

いつの間にか、宝生ミクルが背後に立っている。

その目の底で、隠す気もない憎悪がどろり...

ログインして続きを読む