第58章
「呼んだのは俺じゃない」
鈴崎潤は淡々と言い、表情からは何の感情も読み取れなかった。
宝生知優はかすかに眉を寄せ、伏し目がちになる。思考が沈む。
疑っているわけじゃない。
鈴崎潤がこの件で彼女に嘘をつく必要なんて、どこにもないのだ。
引っかかるのは――双葉知世が、いったいどこから知ったのかという一点。
昨夜のことを思い返す。あの場にいたのは自分以外だと、数人の使用人だけ。
……使用人が口を滑らせた?
その程度で済ませられる話じゃない。飲み込めるわけがなかった。
身の回りに目が紛れ込んでいるかもしれない――そう思っただけで、皮膚の内側がざわつく。気持ち悪い。
宝生知優は隙を...
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