第59章

宝生知優が邸宅に足を踏み入れたとき、小沢は庭で身をかがめ、雑草を刈り込んでいた。

足音に気づくと、小沢は顔を上げ、いつも通り礼儀正しく微笑む。

普段の二人は、会えば会釈する程度。余計な言葉は交わさない。

けれど今日、宝生知優はふっと足を止め、そのまま彼女の前まで歩み寄った。口元に柔らかな笑みを浮かべて言う。

「小沢、ちょっとお茶でも行きましょう。聞きたいことがあるの」

小沢はわずかに目を見張り、手にしていた道具を置くと、促されるまま客間へとついていった。

宝生知優は落ち着いた所作で腰を下ろし、急須を取り上げる。さらさらと湯を注ぎ、白磁の湯呑みを小沢の前へ滑らせた。

何もかも見透...

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