第9章
絵里視点
朝日はまるで悪意に満ちたスポットライトのように、五条酒造を照らしつけていた。どこもかしこも白い薔薇で埋め尽くされ、招待客は全身ブランド物で着飾っている。
完璧な破滅に、完璧すぎるほどの天気だ。
私は黒いドレスをまとい、芝生の端に立っていた。祭壇で白いタキシードを直す和也の姿が見える。葵は優雅なドレスを身にまとい、満面の笑みを浮かべているが、それは偽りの幸福に過ぎない。まるでどこかのお姫様のようだ。
(こいつら、これから何が起こるのか、何も分かっていない)
幸太が私の肩をぐっと握った。「準備はいいか?」
「ええ、とっくにね」私の声は鋼のように揺るぎなかった。
...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章

5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章


縮小

拡大