第161章

俺は階段を駆け下り、ユニットのエントランスを飛び出し、団地を抜けた。その道すがら、海子とばったり出くわすことをどれほど願ったことか。だが残念なことに、目に入ったのは、狂ったように走る俺を怪訝な顔で見送る見知らぬ通行人だけだった。俺はタクシーを拾い、全速力で川岸へと向かうと、小船をチャーターして父さんの住む中州の島へと急がせた。

小船に揺られながら、俺の心境は複雑だった。父さんのところに着いたら、海子がいるのだろうか? その気持ちは期待であり、同時に恐怖でもあった。心臓は早鐘を打ち、呼吸は乱れ、隠しきれない緊張が全身を支配している。船が行程の半ばに差しかかった頃、海子から着信があった。

「...

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