第163章

「ジュルッ、チュッ……」

父さんが海子の赤い唇を捉えることに成功すると、生々しい接吻の音が響いてきた。カーテンの裏に隠れている私は、形も肌触りも全く異なる二つの唇が固く重なり合い、吸い付いているのを見て、胸がズキリと痛んだ。

監視カメラ越しには数え切れないほど見てきた光景だが、こうして肉眼ではっきりと目にするのは初めてのことだ。愛する妻の赤い唇が他の男に味わわれている。まるで、自分にとって大切な宝物を奪われたような喪失感が襲ってきた。

カーテンの裏でどれほど立ち尽くしていただろうか。私は思わず苦笑した。全く、自分をごまかすのもいい加減にすべきだ。こんなことは何度も起きているし、とっくに...

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