第169章

 林の小道を歩きながら、今夜どうするべきかをずっと考えていた。これだけ風が強くて、しかももうこんな時間だ。船頭は本当に船を出してくれるだろうか。一度電話をして聞いてみるべきかもしれない。もし駄目だと言われたら、この小島のリゾートにあるホテルにでも泊まるしかない。今夜自分の身に起きたことを思い返すと、知らず知らずのうちに首を振り、苦笑いが漏れた。

 ちょうど林を抜け、発電所の門が見えてきたときだ。父と海子の姿が目に入った。咄嗟に道端の雑草の中へ身を滑り込ませる。気づくのが一瞬でも遅れていたら、父と海子に見つかっていたかもしれない。今夜着ている黒い服が、暗闇の中で最高のカモフラージュになってく...

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