第181章

「分かった。入ってもらって」

佐実にそう指示を出す。

「コツ、コツ、コツ……」

三十秒も経たないうちに、ヒールがフロアを叩く乾いた音が近づいてきた。俺は視線をパソコンの画面に落としたまま、そのまま待つ。ドアが開く気配がしてから、ようやく顔を上げて海子の方に向き直った。

いつの間に着替えたのか、海子は見慣れないスーツ姿だった。しかも明らかに新品だ。スーツならもう十分な数を持っているはずなのに、どうしてまた一着増やしたんだ、と一瞬だけ違和感が胸をかすめる。

「お腹空いてる? 今食べる? それとも、もう少ししてから?」

海子は入ってくると、まず俺に向かってふわりと笑顔を見せた。それだけ...

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