第231章 IFストーリー

会社に着いたときには、もう夕方の五時になっていた。いつもならもう家に帰って、海子や父と一緒に夕食の席についている時間だ。けれど今夜は舞踏会に出席しなければならない。その前に、身だしなみのプロデュースと、マナーに関する突貫の研修を受けることになっている。

胸の奥では、どうしても別のことを考えてしまう。今ごろ父は、もう家に戻っているだろうか。食卓には、父と海子、ふたりきり。男と女が向かい合って、夕食をとっているはずだ。――いや、それどころか、もうとっくに、限られた時間を惜しむように、肌を重ね合っているのではないか。

「聞いていますか。いったい、何を考えているんです」

くだらない想像に耽って...

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