第278章 IFストーリー

海子はスマホを握りしめたまま、しばらくためらっていた。やがて下唇をきゅっと噛み、意を決したように発信ボタンを押す。

……今どきのテクノロジーには、本当に感心させられる。仕掛けておいた監視装置の盗聴機能は、相変わらず優秀だ。イヤホン越しに、発信中の「プルル」という呼び出し音がはっきりと耳に届く。

まだ相手は出ていない。けれど、誰に掛けているのかは分かっていた。今日一日、私のスマホには海子から一本も連絡がない。着信履歴にも、不在着信すら残っていなかったのだから。

「……もしもし」

おそらく海子は、監視装置のかなり近くでスマホを耳に当てているのだろう。今度は、通話が繋がる音と一緒に、親父の...

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