第29章

浅沢瑶ははっきりと感じ取った。その瞬間、盛岡晃の手が、無意識のうちにすっと離れていくのを。

何かがちくりと胸を刺したような気がした。だが、それもすぐに静けさへと溶けていく。

やはり、そうか。

盛岡晃も自身の失態に気づいたのだろう。手を離した直後、再び彼女の手を握ろうと手を伸ばしてきたが、浅沢瑶は表情一つ変えずにそれをかわした。

彼女はテーブルにいる取引先の面々に礼儀正しく会釈すると、斉藤に向き直った。

「斉藤さん、少し食事を取ってきますね」

盛岡晃を見ることも、宇佐美萌を見ることもなく、ただまっすぐにビュッフェ台へと歩き出す。まるでここで起きた出来事のすべてが、自分とは無関係であ...

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