第52章

受話器の向こうには、一瞬の死のような静寂が落ちた。

盛岡晃は会社の会議室にいた。激しい議論を終えたばかりで、眉間にはまだ鋭い剣幕が残っている。合間を縫ってわざわざかけた電話が、まさかこんな氷のように冷たい嘲笑で返されるとは思いもよらなかった。

交渉による苛立ちは、瞬時にそれを上回る激しい怒りへと変わる。

「おまえの中では、俺はそんなに最低な男か」

彼は声を押し殺した。一語一語が歯の隙間から絞り出されたようで、彼自身すら気づいていない傷つきが滲んでいた。

最低?

浅沢瑶は車の窓に寄りかかっていた。冷たいガラスでさえ、今の彼女の胸に広がる荒涼とした灰を冷ますことはできない。

窓の外...

ログインして続きを読む