第8章
質素な灰色の修道服に身を包み、私は小さな説教壇に立っていた。眼下には二十人を超える孤児たちの、無垢な顔が並んでいる。
「天の父よ、どうかこの子らに祝福を……」
私は静かに祈りを捧げながら、久しく忘れていた安らぎが全身を包み込むのを感じていた。
二年。恐怖も、陰謀も、流血もない日々。パトリック神父の庇護の下、修道女として生き、ただ愛を必要とする子供たちの世話をするだけの生活だった。
「アーメン」
子供たちの愛らしい声が教会に響き渡る。
子供たちのミサを続けようとした矢先、背後から重々しい足音が聞こえてきた。その歩調を、私は嫌というほど熟知していた。自信に満ち、傲慢で、独占...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
縮小
拡大
