第167章

「心ちゃん!」

 月見華はしゃがみ込み、娘を強く抱きしめた。こらえ続けてきた涙が、ついに頬を伝い落ちる。

 傍らでは八朔総司も、妹の手をぎゅっと握りしめて離さなかった。

「もう大丈夫、もう大丈夫よ……」

 月見華は子供たちの体を離すと、優しくそう言った。

「帰りましょう」

 車は一時間ほど走り続け、やがてM国の郊外にある一軒の別荘の前で停車した。

 市街地の喧騒から遠く離れ、周囲には深い森と静寂な湖が広がっている。

 ここは千川成空が彼らのために特別に手配してくれた住まいだった。

 別荘に入り、荷物を置くと、月見華は柔らかな声で言った。

「お腹空いたでしょう? ご飯を作る...

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