第171章

彼の命令を耳にし、月見華はコップを握る指先に力を込めた。

顔を上げることもなく、背中を向けたまま冷たく言い放つ。

「放っておいて」

今や、彼を一目見るだけで息が詰まるような思いだった。

「華ちゃん」

不意に鴉崎理が立ち上がり、月見華の傍らへ歩み寄ると、彼女を庇うようにその前に立ちはだかった。

「兄さん、華ちゃんが上がりたくないって言ってるんだ。ここにいさせてあげてよ。もう十分……彼女を追い詰めたろ」

鴉崎響の視線が、獲物を狙う鷲のように鴉崎理を射抜き、最後には月見華の肩に置かれたその手へと釘付けになった。

「鴉崎理、俺に指図するな。その手を離せ」

「手を引くべきなのは兄さん...

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