第270章 ゆっくりと

「違うわ!」

向日美香は真摯な瞳で訴えかけた。

「学生時代に付き合っていた頃は、毎日授業に追われていて、実際には一緒に暮らしたことなんてなかったじゃない!それに、今の私たちにはそれぞれ自分の子供がいるのよ。一緒になりたいなら、せめて子供の気持ちを考えなきゃ!」

「まだ若かったら、自分たちだけで決められたわ!でも今は、何をするにしても慎重に考えた上でないと行動に移せないのよ!」

向日美香の言葉を聞き、藤原太郎はやり切れなさに涙をこぼした。

「そんな理屈、受け入れたくない。君の心にはまだ俺がいるはずだ。俺も君を愛してる。愛し合っているのに、どうして一緒になれないんだ?」

彼は向日美香...

ログインして続きを読む