第273章 小林美穂はどこへ行ったのか

父の言葉に滲む期待を感じ取り、藤原未咲は胸の奥に苦いものを覚えた。彼女は自らグラスを手に取り、向日美香に向けて言った。

「向日のおばさん、一杯どうぞ。海外からの長旅、本当にお疲れ様でした!」

向日美香も慌ててグラスを掲げる。

「ありがとう、未咲ちゃん!ほんの一口だけいただくわね!」

言葉を交わし、二人のグラスが軽い音を立てて合わさった。

その時、未咲はふと、意図せず口走ったように唐突にこぼした。

「母も家にいればよかったんですけど。ここ数年、母からもよくおばさんの名前を聞いていたんです!もしおばさんがいらしたと知ったら、きっと大喜びしたはずですよ!」

小林美穂の名前が出た途端、...

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