第56章

「どうしたの?」

葉山梓が病気だと聞いた藤原未咲の顔には、すぐに心配の色が浮かんだ。

「この前、誰かに助けられたって話したでしょ?今、毎晩寝るとその日の光景が夢に出てくるの。夢の中ではいつもその人のマスクを取って、誰なのか見てみたいって思うんだ!」

顔さえ見ていないのに、毎日頭から離れない。

家族から与えられた任務すら、もう実行する気が起きなかった。

最近は建築部で毎日工事の確認に出かけることが多く、会社にいる時間がほとんどないのだ。

昌栄グループの会長に会う機会を探すなんて、なおさら無理な話だった!

あの人は全く会社のことに関わっておらず、鈴木祐実でさえ会長と連絡を取るときは...

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