第77話

アルファ ニコラス

オフィスに入ってから、もう二時間近く経つ。だが、そうは思えないだろう。最善を尽くしているにもかかわらず、ほとんど書類仕事が進んでいないのだ。俺の心は昨夜と今朝の、メイトとの出来事へと何度も引き戻されてしまう。昨夜、俺たちはついに印を刻み合った。ああ、分かっている。出会ってからそれほど時間は経っていないし、交わってからはさらに短い。だが、ほとんどのメイトは最初の一日か二日で互いに印を刻むものだ。それに比べれば、俺たちは時間をかけた方だろう。だが、それでいい。

正直に言えば、最初の頃の彼女への仕打ちを考えると、彼女が俺に印を刻むことを許してくれただけで、ただただ嬉しく、光...

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