第80話

アルファ・ニコラス

ライアンがようやく口を開くのを待つ間、空気は張り詰めている。ロージーは今にも爪を噛みちぎってしまいそうで、まだ何の情報も得ていないというのに、いつでも逃げ出せるように身構えているのがわかる。彼女もトニーも、二人とも爆発寸前といった様子で、その気持ちも無理はなかった。

「ライアン、頼むから話し始めてくれ!」トニーが懇願すると、ライアンは頷いた。緊張しているようだ。それも理解できる。この捜索を始めてから、ほんのわずかでも希望の光が見えたのはこれが初めてなのだ。もしこれが何でもなかったとわかれば、ロージーとトニーは打ちのめされるだろうし、それはライアンにとっても耐え難いことに...

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