第9話

アルファ・ニコラス

走った。俺は自分のメイトを見て、そして逃げた。彼女から逃げ、今、俺は自分のオフィスに隠れている。臆病者のクズ野郎だ。これでどの面下げてアルファだと言える?自分のメイトに出会っておきながら、逃げ出す男、それもアルファがいるだろうか。さらに悪いことに、彼女は俺を見た。そして、俺が誰であるか、きっと気づいていたはずだ。『その通りだ。彼女のウルフが俺たちを感知した。俺たちがメイトだと分かったんだ。それをお前は、クソッ、逃げやがった!』あれから三十分近く経つが、ストームが口を開いたのはこれが初めてだ。俺に対して激怒している。それも分かるし、彼が腹を立てるのも無理はない。

「すまな...

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