チャプター 35

ベラ視点:

ムーンライト・パレスは、ヴィクターが人目を避けた商談の場に選ぶに違いない――そう思っていたとおりの店だった。金融街の商業ビル最上階に居を構える高級店で、プライバシーを重んじる重役向けの個室がいくつも用意されている。受付でヴィクターの名を告げると、静かな廊下を案内され、突き当たりの部屋へ通された。

扉を押し開けた瞬間、窓際に立つヴィクターの姿が目に入った。だが、ひとりではない。彼の傍らの席から、二十代半ばほどの若い男が立ち上がる。礼儀正しい所作なのに、どこか揺るぎない自信がにじんでいた。短く切り揃えられた黒髪、聡い目が一瞬で私を測り、それから柔らかく笑う。

入ってきた私に気づい...

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