チャプター 9

ヴィクター視点:

ベラがエレベーターの中へ消えていくのを見送った。磨き上げられたクロームに映える赤いドレスが、扉がすべるように閉まる直前、ひときわ鮮やかな色の閃光となる。彼女の何かが、頭の奥に残りつづけていた――ARIAを操る冴えだけではない。夫の話題を出したとき、彼女の瞳がふっと翳った、その瞬間だ。

腕時計を確かめ、同じフロアの別の個室へ向かって廊下を歩き出す。次の面会が入っている部屋だ。扉に届く前に、手の中の電話がぶるっと震えた。画面が光り、着信が表示される。

ヴィンセント・ハント

父だ――モスグレンの領地からフェニックス・パックを治める、現アルファ。モスグレンとエンバーホールドの...

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