第11章
四方は、しんと静まり返っていた。
林原撫子は顔を横に向けたまま、ようやく状況を理解する。まず半分の頬がじん、と痺れ、数秒遅れて、ひりつくような熱い痛みが追いかけてきた。
唇をかすかに引きつらせ、そっと手を上げて頬に触れる。
冷えた視線が、向かいで目を吊り上げる男へ、氷の矢のように真っ直ぐ突き刺さった。
「撫子、お父さんの平手打ちを恨むな」
沈黙が数秒落ちたところで、林原母が唾を飲み込み、先に割って入った。
「これもあなたのためよ。さっきみたいなことを言われたら、どこの親だって手が出るわ。お父さんが意地悪なわけじゃないの」
母は二歩近づき、撫子の手を取ろうと伸ばす。だが、撫子がさ...
ログインして続きを読む
チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章
6. 第6章
7. 第7章
8. 第8章
9. 第9章
10. 第10章
11. 第11章
12. 第12章
13. 第13章
14. 第14章
15. 第15章
16. 第16章
17. 第17章
18. 第18章
19. 第19章
20. 第20章
21. 第21章
22. 第22章
23. 第23章
24. 第24章
25. 第25章
26. 第26章
27. 第27章
28. 第28章
29. 第29章
30. 第30章
31. 第31章
32. 第32章
33. 第33章
34. 第34章
35. 第35章
36. 第36章
37. 第37章
38. 第38章
39. 第39章
40. 第40章
41. 第41章
42. 第42章
43. 第43章
44. 第44章
45. 第45章
46. 第46章
47. 第47章
48. 第48章
49. 第49章
50. 第50章
51. 第51章
52. 第52章
53. 第53章
54. 第54章
55. 第55章
56. 第56章
57. 第57章
58. 第58章
59. 第59章
60. 第60章
縮小
拡大
