第11章

四方は、しんと静まり返っていた。

林原撫子は顔を横に向けたまま、ようやく状況を理解する。まず半分の頬がじん、と痺れ、数秒遅れて、ひりつくような熱い痛みが追いかけてきた。

唇をかすかに引きつらせ、そっと手を上げて頬に触れる。

冷えた視線が、向かいで目を吊り上げる男へ、氷の矢のように真っ直ぐ突き刺さった。

「撫子、お父さんの平手打ちを恨むな」

沈黙が数秒落ちたところで、林原母が唾を飲み込み、先に割って入った。

「これもあなたのためよ。さっきみたいなことを言われたら、どこの親だって手が出るわ。お父さんが意地悪なわけじゃないの」

母は二歩近づき、撫子の手を取ろうと伸ばす。だが、撫子がさ...

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