第14章

声は大きくない。だが、後ろにいた数人のチンピラの耳には十分届いた。

女が自分たちの兄貴にそんな口を利いたと知るや、真っ赤な髪の男がさっと前へ出る。もう一方から回り込み、林原撫子の退路を塞いだ。

残りの二人もにじり寄り、目つきが露骨に険しくなる。

「身の程知らずが」赤髪が鼻で笑い、先頭の男の肩をぽんと叩いた。「兄貴がお前と知り合ってやろうってんだ。ありがたく思え」

「そのありがたみ、私には不要です」

林原撫子は、笑うしかなかった。ゆっくりと手のトレーを背後の棚へ置く。

……これじゃ、12番卓のフルーツ盛りと酒は届けられない。

フロントへ視線を投げる。今は一番忙しい時間帯だ。あのパ...

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