第30章

林原撫子は手にしたスタンガンにちらりと目を落とし、次いで村木原矢の、笑みをたたえた瞳を見返して首をかしげた。

『……何がそんなに可笑しいの?』

『それ、なんで持ってきたんだ?』村木原矢は顎でスタンガンを示す。もともと華奢な林原撫子がそれを提げていると、携帯型とはいえ一見して前腕ほどの太さがあるように見えた。

『刃物より使いやすいから』林原撫子は真顔で言った。『ナイフは力加減を間違えると危ないでしょ。スタンガンなら、ちょうどいい』

『それに……』

前に工場で起きたことが脳裏をかすめ、林原撫子の瞳の色が少しだけ沈んだ。直接対峙はしなかった。けれど、あまりにも多くを失った。

備えがある...

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