第39章

林原撫子は、離れていても酔っ払いから漂ってくるむっとする酒臭さを嗅ぎ取って、思わず眉をひそめた。

『なにするの!』

壁際に追い詰められている女の子は二十歳前後に見える。まだ青さの残る顔で、自分より頭ひとつ高い男を見上げながら、怯えたようにスカートの裾をぎゅっと握りしめた。

酔っ払いは酒気を吐き散らし、のろのろと一歩詰める。片手で彼女の背後の壁に手をつき、もう片方の手もゆっくり持ち上げて――その頬を撫でるつもりらしい。

女の子は反射的に肩をすくめ、顔は恐怖で強張っている。それでも正面から逆らう勇気はないのか、歯を食いしばり、震える唇で何かを必死に訴えていた。

スカートの裾をねじる指は...

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