第54章

林原撫子は一瞬、動きを止めた。視線が、手渡された箱に吸い寄せられる。

巷でよく見る有名ブランドの化粧箱ならいくらでもある。けれどこれは、それらよりも造りがずっと丁寧で、いやらしい派手さがない。じっと見つめていると、どこか古色を帯びた気配さえ、かすかに漂っている気がした。

――こんなの、見たことない。

撫子の胸が、ふっと脈打つ。

『これは……?』

目に好奇心が満ちていく。さっき雨宮蓮二に絡まれたせいで残っていた不快感は、いつの間にか跡形もなかった。少し迷ってから、箱の正面にある丸みを帯びた留め金を見つめ、顔を上げて差し出した相手を見る。

村木原矢は、彼女の好奇と戸惑いを見落とすはず...

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