第6章

「撤退——!」

村木原矢は全身がびりびりと痺れた。ほとんど反射のように目が血走り、喉を裂く勢いで叫ぶ。

「逃げろ!」

怒号と悲鳴が入り混じる雑踏のなか、動き出す間もなく、脇腹にどん、と押し出す力がぶつかった。

隣の警官が、全身で突き飛ばしてきたのだ。

「村木隊長、早く逃げて! 生きてくれ!」

村木原矢は咄嗟に振り返る。引き裂かれそうなほど見開いた目に、信じられないという色が滲んだ。

視界の最後に焼きついたのは、朝夕を共にしてきた同僚の顔。その口元に浮かんだ、安堵の笑み。

次の瞬間、村木原矢の体は遠くへ弾かれた。ちょうど同じように押し出された林原撫子にぶつかり、ふたりは体勢を崩...

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