第60章

圭也は眉をひょいと持ち上げ、いかにも当然といった顔で言った。

「俺はここに残って、黒崎先生から婦人科の知識を勉強したいんだ。君の診察の邪魔はしない」

「外科医が婦人科まで学ぶの?」梨紗は歯ぎしりするように言い返す。

――この男、ほんとにタチが悪い。わざと居座ってるに決まってる。

圭也は真面目ぶってうなずいた。

「うん。芸は身を助けるって言うだろ。覚えることは多いほうが、将来の就職にも有利だし」

梨紗は口元を引きつらせ、心の中で圭也を何十回も罵った。

こんな名家の御曹司が就職を心配する日が来たら、そのときは世界のほうが先に終わっている。

「はいはい、からかっただけ。俺は外で待っ...

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