第8章

「っ……!」

 康之が苦痛に息を漏らした。

 梨紗は呆然と、自分の前に身を投げ出した康之を見つめた。ほんの一瞬、意識が揺らぐ。十年前、炎の中から必死で自分を救い出してくれた、あの時の康之の姿が脳裏によみがえった。

 康之は腕の中の梨紗を抱きとめた瞬間、あまりの細さに息をのんだ。昔、この腕の中でやわらかく身を預けていた身体とはまるで違う。痛ましさに胸が締めつけられ、思わず目が赤くなる。

「康之、何してるのよ。梨紗はエイズなんでしょ? うつったらどうするの!」

 リリアの声で、康之ははっと現実に引き戻された。すぐさま梨紗から手を離す。

 その瞬間、梨紗の意識もまた冷えきった。瞳をかす...

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