第26章

「そうよ。おととい話したでしょ? 昨日、納車だったの」

そう言いながら、九条美琴はキーを取り出してロックを解除し、軽く顎で示した。

「乗ってみる?」

「い、いいいい!」

広末蓉子が反射的に拒否する。顔色が、ひどく妙だった。

九条瑞希は唇を噛み、目を見開く。

真新しいマセラティの隣に、ポルシェ・マカンが停まっていた。

瑞希の車だ。

瑞希の運転は上手いとは言えない。マカンは買ってまだ2年なのに、ボディは擦り傷だらけで、直してはまた傷が増え……すでに「新車」の面影は薄い。

さっき九条柏人が言った。あのマセラティは300万近い、と。

胸の奥が、じわりと酸っぱくなる。

自分の車な...

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