第83章

彼の手のひらは大きかった。その一枚の壁が九条美琴の顔の大半を覆い、視界を完全に遮ってしまう。

九条美琴の胸が、ひやりと揺れた。彼の気遣いの鋭さに、なのか。あるいは、その優しい庇護に、なのか。

水野莉央が声に振り返り、その光景に当てられたように目を瞬かせる。二人のやり取りに、思わず胸が跳ねるような高揚がこみ上げ、勢いよく口を開きかけた。

「陸川先生、この絵って――」

「莉央!」

九条美琴が即座に制した。

水野莉央ははっとして口をつぐむ。言ってはいけない。今さら思い出したのだ。

陸川雅樹が水野莉央へ視線を向ける。

「この絵がどうした」

水野莉央は切り替えが早かった。すぐに言い換...

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