第89章

「俺が選んだ相手だ。誰が来ようと止められない」陸川雅樹はきっぱりと言い切った。

「……」陸川百合は怒りで言葉を失い、くるりと背を向けると息子の腕を乱暴に掴んだ。「行くよ、帰る!」

「母さん……おじさんは美琴と――」

「黙りなさい!」陸川百合は腹の底に溜め込んだ火を抑えきれず、それでも弟に当たるわけにもいかない。なのに息子は空気も読めない。瞬間、平手が飛んだ。

ぱんっ。

菅野優斗の顔が横に弾け、涙声で振り返る。「母さん、俺を叩くの? 今まで一度も手を上げたことなかったのに……怒らせたのはおじさんだろ、なんで俺を――あっ!」

文句が終わる前に、陸川百合の手がまた落ちる。二度、三度。狙...

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