第11章 暴走する古川寒弥

 

病院の廊下は、その瞬間――死んだように静まり返った。

古川寒弥は、そこに縫い付けられたみたいに立ち尽くしていた。頬には、薄いエコー写真がかすめた感触が、まだ残っている。

たった一度、触れただけ。

なのにそれは、平手で思いきり殴られたみたいに、じんじんと熱く痛んだ。

目の前の須藤寧音が、急に知らない女に見えた。

あれは、本当に――あの須藤寧音なのか。

彼に逆らえず、言葉を荒げることすらできなかった女。

どれだけ冷たく突き放しても、ただ黙って飲み込み、涙の膜を張った目で見上げてきた女。

かつて愛情と依存で満ちていたはずの瞳は、いまや荒れ果てた死地みたいに虚ろで、そこには彼の影...

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